あの子が衣装に着替えたら

ライブハウスとサッカースタジアムに溺れる人による、アイドルとその周辺の音楽のこと。

推しが一週間後に突然卒業することになった。

私が「有安杏果ももクロを卒業する」と知ったのは仕事中で、第一報は夫(れに推し)からの「ももか卒業だって!まじで。(原文ママ)」というLINE。いつもなら廃人レベルでツイッターを見てるクセに、杏果の卒業が発表されたその時に限って、仕事の昼休みを利用してポケモンGOをしており、かなりの混乱になってることを全く知らずにいました。

 

まず思ったのは「は?」。

 

いや21日って次の日曜だし、そこライブの予定なんてあったっけ?という混乱から来る「は?」。「一週間後に推しが卒業します」と言われると、もう何が何だかわからなくて悲しいとか腹が立つとかそういう感情全部吹っ飛ばして、理解するための思考がフリーズするんだなという実感。あまりにも何が起きたか良くわからなくて、情報が入ってくるほど脳内で「いやいやいやちょっと待ってよ〜」という感覚しかなくなっていき、理解力が追いつかなくなってしまった自分のことが自分で可笑しくなってしまう始末。

少し時間が経ってから思ったのも「SUZUKIのCM、撮り直しだなぁ」とか「サイリウムの色味が偏ってしまうなぁ」とか、ズレたことばかりでした。全く取り乱さない代わりに、どこか論点の違うところにばかりに目がいってしまう。これが「現実だと思えない」「現実が直視出来ない」ってことかと、変に冷静になってしまう。脳が理解しようとしないという状況を、自分で自覚し理解してしまうというのは、本当に変な感覚でした。

 

悲しくないなんてことは断じてない。けれど多分、杏果が一週間後にはいないことを知った今よりも、これから先、二週間後、一ヶ月後、一年後、それからもっともっと先、ももクロが続いている未来で、杏果が歌っていたパートを他のメンバーが歌っているのを見た時、振付のフォーメーションが変更になっているのを見た時、横並びになった時の夏菜子の位置が真ん中ではないのを見た時、そういう未来のふとした時に「あ、いないんだ」と感じる瞬間が来ることの方が今は怖いと思っています。ワーズや怪盗の楽曲が届ける風景自体が変わるなんて、考えたこともなかったから。

 

急すぎる発表に怒るファンがいるのは当然だし、私も流石に一週間は応援していた人々に対して誠意がないのではないか?と最初は思いました。けれど、発表後の光景を(と言ってもSNSでの文字情報だけど)目の当たりにして正直なところ、一週間後というタイムリミットは、私にとっては限りなく正解に近いと今は感じています。

 

昨日の夕方から、ももクロは様々なメディアに5人で出演しては今回の経緯を報告していて、それに対して毎回毎回同じ質問に同じ返答をするメンバーと、それを取り巻く環境を、正直私はもう見ていられなくなっています。

「普通の女の子として生活してみたい、先のことは何も決まってません」と答え続ける杏果に対して、SNSで好き勝手に浴びせられる「本当は言えない理由があるのでは」「納得出来る理由がひとつもない」「どうせ男だろ」「元から仲が良さそうに見えなかった」「妊娠や結婚なら正直に言え」「文春砲でも食らったんじゃないか」等の心無い言葉。「年明けの前には知っていた」と語る夏菜子、しおりん、あーりん、れにちゃんの態度や表情から、自分が納得出来るための材料を必要以上に読み取ろうとする人々。どちらも私には見ていられない。メンバーに卒業の意思を伝えるその瞬間をカメラがとらえる必要の無いももいろクローバーZになってくれたのに、結局そういうドラマを探りたくなってしまう人がいる。一般企業でも「一身上の都合」で退職出来るのに、ショービジネスだからと執拗に納得する理由を求められる。

もし猶予期間がもっと長ければ、長ければ長いほど残酷な言葉や厳しい視線を浴びせ続けられる姿を見せられてしまう。私にはこれが長く続くのは耐えられない。もちろん、そうしないと気持ちが休まらない人、感情がおさまらない人がいるのは理解している。一週間というのは、そういう騒めきがおさまらないうちに過ぎ去ってしまう程度の時間だ。でも、もう、それでいいんじゃないかと思っている。

 

私は杏果が説明する理由が全てだと思っているし、そういう理由で仕事を投げ出すのも有り得ないことではないと思っています。「自分探しをしたい」みたいな理由で仕事辞めちゃう人なんてザラにいて、そういう人がたまたま多くの人の目に触れ、多くの人を巻き込む仕事に就いていただけだと受け止めています。無責任ではあると思うけど、責任感で本人が潰れてしまうくらいなら無責任でいいよ。

本人の口から公表されないことは、知ってほしくないことなんだと思う。明確な理由を言わないのは、今後のももクロに対する優しさだと思っている。

 

10周年のライブに行くために、マイル貯めてたのにな。でも、悩みを抱えたままでは10周年の船には乗れないし、乗せられないよね。そして、10周年が杏果の卒業のための年のようになってしまうのも好ましい状況ではないと思うよ。残念だけど。5人で迎える10周年も見たかったって気持ちも間違いなくあったんだけど、私は夏菜子もしおりんもあーりんもれにちゃんも、みんな大好きだから、一人に注目が集まってしまう10周年ライブや、青春ツアーの残りや、バレイベなんて望まないよ。大好きなんだよ5人とも。

 

今の気持ちをそのまま残しておきたくて書いたけれど、多分いま淡々と書いたことも後になったらカラ元気だったと振り返るんだろうなと思ってる節もあって。推しの卒業は、本当に肝心なところに視線が行かなくなるんだなと、実感しています。

 

 

 

「そういえばももクロを知ったのは何故かサッカー情報サイトだったな」と思い、久し振りにそのサイトを覗いたら、サイトはもう無くなっていて、そのサイトが使っていたドメインは掃除用具のアフィリエイトサイトになっていました。

どうせこの後はどっかのアフィリエイトサイトが「ももクロ有安、脱退の真相は…」みたいな適当なタイトルの記事でページビュー稼ぐんだろうな…と考えた瞬間、一番の怒りがわきました。全てがどこか空虚に感じていたけど、私、まだ熱く怒れるんだ。